さよなら

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今日、長年連れ添ったテレビデオ(テレビとビデオがセットになったもの)と
さよならした。
東京に出て来た、高校生の頃から、
ずっと私のそばにいた。
真っ黒なのが嫌で、青空を描いた。
部屋が明るくなった。
それからずっとずっと、知らない世界を映し出してくれた。
地デジ化に伴い、くしくも7月24日(なつよの日)に、
見られなくなってしまう。
年を重ねた体は、だんだんと不調を訴え、
最近では、うまく機能しなくなった。
そろそろなのかな・・・。
最後は、自分の手で、再生の道へ送り出したい。
そう思って、感謝の気持ちを込めて、
汚れた体を綺麗に磨きあげた。
ずっと頑張り続けたんだもの。
大事に部屋から外へ運び出し、
一緒にタクシーに乗った。
タクシーに揺られながら、ずっとなでなでした。
大丈夫だよ、怖くないよ、ちょっと痛いかもだけど、
また新しく生まれ変わるんだよ、
そして、また誰かを笑わせたり、喜ばせたりしてね。
そんなこと考えていたら、何だか胸が苦しくなってきた。
ぎしぎしと、金属が擦れる音。
重機のエンジンの音。
少人数で忙しそうに働く作業着の人達。
鉄の柵の中に、くたびれたたくさんの洗濯機が積み重ねられ、
重機で倉庫に運ばれている。
事務所らしき壁には、家電リサイクル受付と、小さく書かれている。
作業をしているお兄さんに、訪ねると、
「ここへ持ってきて」と言われた。
君を大事に運んだ。
キリンが余裕で飼えちゃいそうな天井の高い倉庫。
大きな台車の前で君を受け取ったお兄さんは、
もう壊れているTVみたいに、乱暴に台車に乗せ、転がして倒した。
待って、もっと大事に扱って。
声にはならなかったけど、私の顔を見て、お兄さんは少し、
申し訳なさそうな顔をしていた。
大きな鉄の倉庫、台車の奥の方には、鉄の柵に積み上げられた、
何百ものTV達が見えた。
大きくて分厚いの、小さな白いの、まだまだ新品みたいな立派なもの。
倒されて、ぎっしりと重なり合い、積み上げられている。
君も、あんな風にされちゃうの?
怖くて、悲しくなった。
こんな現場、見なければよかった。
何にも知らなければよかった。
だから余計に、きっと立派に生まれ変わるんだ。
だれかの役に立つんだ。
そう思わなければ、心が壊れそうだった。
最後に、横たわった君をそっと撫でて、
ありがとうと言った。
生まれ変わったら、また、どこかで会おうね。
大好きだったよ。
ごめんね、置き去りにして、ごめんね。
振り向かないで、歩き出す。
少し逃げ出すみたいに、走った。
まだ少し、風が冷たい。
涙が出た。
別れがつらくてなのか、
置き去りにしてしまった後悔からなのか、
どちらかわからなかったけど、
涙が出るくらい、君が大好きだったよ。
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