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02月22日
さよなら

今日、長年連れ添ったテレビデオ(テレビとビデオがセットになったもの)と
さよならした。

東京に出て来た、高校生の頃から、
ずっと私のそばにいた。
真っ黒なのが嫌で、青空を描いた。
部屋が明るくなった。
それからずっとずっと、知らない世界を映し出してくれた。

地デジ化に伴い、くしくも7月24日(なつよの日)に、
見られなくなってしまう。
年を重ねた体は、だんだんと不調を訴え、
最近では、うまく機能しなくなった。
そろそろなのかな・・・。

最後は、自分の手で、再生の道へ送り出したい。
そう思って、感謝の気持ちを込めて、
汚れた体を綺麗に磨きあげた。
ずっと頑張り続けたんだもの。

大事に部屋から外へ運び出し、
一緒にタクシーに乗った。
タクシーに揺られながら、ずっとなでなでした。
大丈夫だよ、怖くないよ、ちょっと痛いかもだけど、
また新しく生まれ変わるんだよ、
そして、また誰かを笑わせたり、喜ばせたりしてね。
そんなこと考えていたら、何だか胸が苦しくなってきた。

ぎしぎしと、金属が擦れる音。
重機のエンジンの音。
少人数で忙しそうに働く作業着の人達。
鉄の柵の中に、くたびれたたくさんの洗濯機が積み重ねられ、
重機で倉庫に運ばれている。
事務所らしき壁には、家電リサイクル受付と、小さく書かれている。

作業をしているお兄さんに、訪ねると、
「ここへ持ってきて」と言われた。
君を大事に運んだ。
キリンが余裕で飼えちゃいそうな天井の高い倉庫。
大きな台車の前で君を受け取ったお兄さんは、
もう壊れているTVみたいに、乱暴に台車に乗せ、転がして倒した。

待って、もっと大事に扱って。

声にはならなかったけど、私の顔を見て、お兄さんは少し、
申し訳なさそうな顔をしていた。
大きな鉄の倉庫、台車の奥の方には、鉄の柵に積み上げられた、
何百ものTV達が見えた。
大きくて分厚いの、小さな白いの、まだまだ新品みたいな立派なもの。
倒されて、ぎっしりと重なり合い、積み上げられている。
君も、あんな風にされちゃうの?
怖くて、悲しくなった。

こんな現場、見なければよかった。
何にも知らなければよかった。

だから余計に、きっと立派に生まれ変わるんだ。
だれかの役に立つんだ。
そう思わなければ、心が壊れそうだった。

最後に、横たわった君をそっと撫でて、
ありがとうと言った。
生まれ変わったら、また、どこかで会おうね。
大好きだったよ。
ごめんね、置き去りにして、ごめんね。

振り向かないで、歩き出す。
少し逃げ出すみたいに、走った。
まだ少し、風が冷たい。
涙が出た。
別れがつらくてなのか、
置き去りにしてしまった後悔からなのか、
どちらかわからなかったけど、
涙が出るくらい、君が大好きだったよ。


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